石井哲夫記念館(石井哲夫について)

石井哲夫記念館

社会福祉法人嬉泉は、前常務理事石井哲夫が昭和30年代に日本社会事業大学に開設した児童臨床相談室を原点とし、受容的交流の立場に立った援助実践を行ってきました。石井哲夫逝去後、その想いと法人の歴史を形にして残すべく、平成27年2月に「石井記念館」を嬉泉福祉交流センター袖ヶ浦内に開設しました。
石井記念館には、かつて子どもの生活研究所内にあった所長室が再現され、石井哲夫の愛用品に加えて、執筆物、著書、録画ビデオ、写真などが展示されていますが、今後も内容をさらに充実させていく予定です。これらの展示物を通して、石井哲夫の人となりを感じていただき、嬉泉の大切にしている理念についてもご理解を深めていただければと願っています。
当面は開館日や時間を限らせていただいておりますので、ご利用の際には事前にお問い合わせください。
多くの皆様のご来館をお待ちしております。

<ご利用案内>
◆開館:随時(下記にお問い合わせください)
◆入場:無料
◆場所:嬉泉福祉交流センター袖ヶ浦 地域療育推進棟2階
〒299-0255 千葉県袖ケ浦市下新田1680
TEL: 0438-62-9121 担当者:石井純子

石井哲夫…その生涯

昭和2年(1927)7月15日ー平成26年(2014)5月28日

石井哲夫

子どもへの思い

東京都世田谷区出身、海軍兵学校を経て東京大学文学部哲学科(心理学専攻)を卒業。 家庭では長男として弟や周囲の子どもたちを慈しみ成長した。第二次世界大戦後の騒然とした時代にあって困難に直面している子どもたちに心を痛め、学生時代には上野駅の地下道でこれらの子どもたちと共に過ごす体験を経て、子どもへの想いを深めた。この想いは、大学における心理学専攻、精神薄弱児(知的障害児)への学問的関心へと繋がり、更には当時まったく未知の分野であった自閉症児の研究という先駆的な活動を推進する力となった。

研究と実践 ―学者・セラピスト&福祉政策―

学位取得後は子どもの育ちをテーマとする少壮の研究者として教職に就き、終生後進の指導に当たった結果、日本の社会福祉分野で活躍する多くの人材を育成し影響を与えることになった。日本社会事業大学では草創期に幼児相談を始めるなど、その研究活動は実践に裏付けられたものであった。これらの相談事業は関係者から強い支持をうけ、後の「子どもの生活研究所」開設の礎となった。 日本社会事業大学教学部長として、研究と実践を両輪の輪とする取り組みは厚生行政からも注目された。その結果、日本の保育政策の基本である「保育指針」の策定や数次にわたる改訂に際して大きな働きをなし、同時に障害福祉政策づくりにおいても厚生省中央審議会委員長や、東京都、川崎市、世田谷区などで委員を務め、各層での政策策定に従事した。

組織の運営 ―施設・団体・学校-

実践に裏付けられた研究教育活動は幅広い人的交流に繋がった。実業家須藤晃弘との出会いは「社会福祉法人嬉泉」を生み、今日に至る半世紀に及ぶ活動をもたらした。保育分野での働きは各界からも広く支持され、全国保育士養成協議会では会長として組織改革を行い、日本保育協会では初の民間出身者として理事長職に就任し、新たな務めを行いつつ最晩年に至るまで全国の保育士への研修講師の陣頭に立った。 日本社会事業大学名誉教授を経て、白梅学園大学初代学長、目白大学学術顧問として学校経営に深くかかわりつつ、日本自閉症協会会長として政界との繋がりをもち法制度の整備に邁進した。その見識は全国社会福祉協議会、三菱財団、清水基金、そのほか多くの社会福祉団体、および学会の理事として生かされ、社会福祉の推進に寄与した。これらの仕事に対して、国より叙勲(勲三等瑞宝中授賞)、また石井十次賞、毎日福祉賞この他数多くの賞が授与された。

一貫した姿勢

自閉症児者を大切に思う姿勢を貫き、その「妥協しない気高さ」に魅せられた生涯を送った。最期まで明晰な思考と意識を保ち、嬉泉そして自閉症児者を周囲に語りつつ、静かに眠りについた。菩提寺は東京世田谷の無量寺である。
(関係資料は嬉泉福祉交流センター袖ケ浦「石井哲夫記念館」に保存・展観されている。)

略歴他

石井哲夫

略歴

  • 1927年(昭和2)東京都に生まれる
  • 1950年(昭和25)東京大学文学部哲学科(心理学専攻)卒業
  • 1966年(昭和41)日本社会事業大学社会福祉学部教授
  • 1995年(平成7)日本社会事業大学名誉教授
  • 1995年(平成7)白梅学園短期大学学長
  • 2004年(平成16)白梅学園短期大学名誉学長
  • 2004年(平成16)目白大学学術顧問
  • 社会的活動

  • ・社会福祉法人嬉泉常務理事。「子どもの生活研究所」所長、統括事業所長 
  • ・東京都発達障害者支援センター(TOSCA)センター長
  • ・社会福祉法人日本保育協会理事長
  • ・社団法人全国保育士養成協議会会長
  • ・社団法人日本自閉症協会会長
  • ・全国社会福祉協議会(全社協)、三菱財団、清水基金ほか、多くの社会福祉団体 の理事を歴任
  • 業績

  • ・自閉症への取り組み:研究および療育実践、後進の指導
  • ・障害福祉政策づくり: 全国から地域にわたり、様々な委員を歴任
    (厚生省中央審議会委員長や東京都・川崎市・世田谷区などで委員として政策策定)
  • ・保育: 保育士養成・再教育、保育所運営や保育実務・相談
  • ・教育: 大学教授・学長として学生指導から大学経営まで多くの職責を全うした。
  • これらの仕事に対して、国から叙勲(勲三等瑞宝中授賞)、また石井十次賞、毎日福祉賞、その他、数多くの賞を授与された。
  • 著書紹介

    1966「自閉症児がふえている」
    三一書房
    1969「児童臨床心理学」
    三一書房
    1974「子どもの才能は親が育てる」
    あすなろ出版
    1982「受容による自閉症児教育の実際」
    学習研究社
    1990「自閉症児への援助技術」
    チャイルド本社
    1990「新・保育所保育指針理解のために」
    ひかりのくに
    1995「自閉症と受容的交流療法」
    中央法規出版
    2002「自閉症児の心を育てる」
    明石書店
    2009「自閉症・発達障害がある人たちへの療育-受容的交流理論による実践」
    福村出版
    2010「障害児保育の基本」
    フレーベル館
      その他多数