嬉泉

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鼎談「支援者支援がめざすこと」-08-

支援者支援コーディネーター研修

石井

 支援者支援コーディネーターを実際に職場に配置していくことを考えていこうと思う時に、どういう形で訓練を受けたらいいかを教えていただけたらと思います。

藤岡

 特にベースになっている資格や専門性は、多様にあってもいいのではないかと思っています。しかし、今ずっと話題にしていただいているところの理念としては「支援の質を保持するための支援者支援」なのだということです。
 事業所で義務づけられているストレスチェックは、これはこれで職員のメンタルヘルスを保つために非常に有用性が高いと思っていますが、支援者支援で強調しているのは、職員のメンタルヘルスはもちろん大事ですが、その目的は「支援の質を保持する」こと。常にその先には利用者の方々がいる。お子さんがおり、家族がいるという、その理念を保つために支援者支援をするのだという、ここがもっとも大きなコンセプトではないかなと思っています。そういうところをしっかりと研修を受けていただく。
 それから先ほどから話題にさせてもらっている組織的な支援や、あるいは一人一人の今の状態をいち早く把握して支援の手を差し伸べていくこと。支援者支援では「サイレンシング反応」と言って、人はきつくなっていればなっているほど「助けて」とヘルプを求めなくなる。つらい時ほど「助けて」と言えなくなります。だから、きつくなっている人には「助けて」と言われてから助けるのではなくて、「最近、ちょっと調子が悪いみたいだね」「なんとなく元気のなさそうだし」など、そういう支援をこちらから働きかけていくことがすごく大事ではないかなと思っています。支援を受けていると感じない支援者支援です。
 例えば、そういうことなどを考えるために、ストレスチェックとは別の自己チェックで、共感疲労や共感満足、バーンアウト、セルフサポート、グループサポート、そして組織的サポートを盛り込んだ支援者支援二十一項目チェックをつくっています。例えば「受け入れてもらっていると感じる」とか「ユーモアを大事にしている」とか、「困った時は助けを求めるようにしている」とか「オンオフを非常に明確にしようとしている」等の二十一項目についてチェックをいただいて、トータルのメンテナンスに役立てる。
 支援者の状態は時々刻々と変わってきますし、一人として同じ状況にはないのです。だから、他者と比較するものではなくて、支援者はみな、絶妙なバランスで成り立っています。例を出しますと、共感疲労チェックを毎年行っても、すごく高くなる人がいらっしゃいます。こういう方々は「横綱相撲タイプ」と言っていて、「このぐらい疲れていないと仕事をしている気がしない」というタイプ。うちに帰っても何か気になるとやってしまう。だが「この調子だと寝不足になるから寝よう」などと、自然と自己メンテナンスができている。
 それからもう一つは「柳に風タイプ」と言っていますが、ずっと小さい時からものすごい生活を整えるのが上手で、職場が大変な状況にあって、日々さまざまなことに直面しているが、なぜか「おつかれさまでした」としっかりと職場を後にできる。そしてまた次の日はきちんと仕事に来て、だからといって仕事も別に手を抜いているわけではないというか、本当にすばらしい、すごく切り替えが上手な方。これを「柳に風」と言っています。
 相関を取ったことがありますが、「横綱相撲」はもう何年も「横綱相撲」です。「柳に風」は何年も「柳に風」で、つまり支援者はそれぞれ絶妙なバランスで成り立っている。その中間タイプもいらっしゃって、プライベートの出来事とか職場が変わったとか、いろいろなことがあればそこは揺れますが、また安定的になると「横綱相撲タイプ」になったりと、それぞれ個別性が高いです。
 だから、私はそういう多様な職員がいらっしゃることはすごく大事なことではないかと思います。経験や年齢もそうだし、ジェンダーはもちろんですが、仕事の仕方における疲れ具合でも、やっぱり疲れやすい人もいれば、結構回復が早い人もいる。でも、そういういろいろな人たちがいて職場が成り立っているのではないかと思うので、支援者支援ではそういうところを見ていくトレーニングが必要であると感じています。
 そのために「レジデンシャルマップ」という技法があります。施設や家庭で、人それぞれがどんな関わり合いで人間関係や支え合いをされているか、あるいは強度行動障害などの利用者の方から、日ごろ職員がどのようなつらい思いをしているかを絵で整理する。「○」が利用者の方、「◎」を職員として、その関係性をギザギザや実線、点線などで表現する。希薄な関係は点線で、かなり厳しい、大きな声を出されてしまうなどはギザギザが職員に向かっていると表現する。そういうもので日々それを整理する中で、今この職場の中でどこがきついのか、どの方に集中してギザギザが向かっているのかなどに気づくというものです。
 もう一つが「人生脚本」と言いまして、これも支援者支援の技法です。支援者の仕事を続けていくためには、どこか自分の生い立ちや、あるいは自分の今までの人生を整理しながらまた次のステップに向かうことが大事で、折りに触れて自分の人生の中でのこの仕事の位置づけを考えていくことが大事ではないかなと思っています。

 基礎講座で「支援者支援とは何か」という理念をお伝えし、それから技能講座1で「自己チェック」、そして技能講座2で「レジデンシャルマップ」を、さらに技能講座3で「人生脚本」をお伝えし、研鑽を積んでいただきます。このような研修会を昨年度からさせていただいています。まだ始めたばかりではありますが、これから広げていこうかと考えています。先ほどおっしゃっていただいた支援者支援コーディネーター研修という意味においては、そういう場をつくらせていただいています。
 既存の基礎資格などの資格要件は今のところは考えていなくて、これまでお話しした研修を受けて、支援者支援の経験があることが「支援者支援コーディネーター」のベースです。

石井

 ありがとうございます。先生のほうで、そういったパッケージを始めていらっしゃるということですね。ぜひ参加させていただきたいと思いますので、ご案内をいただけますか。

藤岡

 そうですね。ぜひお願いします。

石井

 まずは管理者クラスから始められればと思います。本日はどうもありがとうございました。