嬉泉

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嬉泉の想

鼎談「支援者支援がめざすこと」-03-

共感疲労と共感満足

藤岡

 そこで大事なことが、「できないと思っていたことができるようになった」という成就感です。動作法が始まって何分か後ぐらいには、利用者の方が「自分なりに動かせた」という成就感を支援者も一緒に味わうことができるという、そこがとても大事なことではないかと思っています。そこも受容的交流の「一緒に動かせた」「一緒に何かできた」という(課題を乗り越える)部分とのつながりにもなるかなと思っています。
 そのようにできたことは利用者の方々にとっても自信になりますし、これもまた支援者支援だと思いますが、そういう空間を利用者とつくることができ、そして支援者としてその場に関わることができた。ここは利用者の方の成就感だけではなくて、支援者の成就感にもつながるのではないかなと思っています。支援の場がそうやって構築されていく中には、必ずそこには支援者が参加し、そして支援者自身もそういう成就感を味わっていく。
 だけど、なかなかうまくいかない時もあります。でもうまくいかない時も、一緒に動いている利用者の方が結構いろいろやってくれて、むしろ支援者側に驚きがあるということもあります。「えっ?ここまでできるとは思っていなかったんだけど、すごいね!」という驚きが、また支援者にとっての喜びにつながるかなと思っています。
 これを支援者支援では「共感満足」と言っていて、疲労が高くなっても満足感がそれに伴って起きてくると、疲労の回復が非常に早いとされています。利用者とともに感じる「共感疲労」がある程度いっていても、(「共感満足」があることによって)それが早く解消されたり、あるいは持続しても、支援者としてはむしろ「このぐらい疲れているけど、今日はそれが行えたからだ」と、自分の疲労感に対する肯定的な評価をすることができるなど、支援の場で起きている出来事によって、(支援者の疲労度が)変わってきます。
 私の役割は、そういう何気なくなされているところを「実は一緒にできていますよね」とか、「ここはすごいですね。ここでこういうふうに関わったから、利用者の方はこんな表情になりましたよ」と、通常だったらスルーしてしまうところをしっかりと言葉にしたり、実際にされているところを見ていてあげたりしながら、支援者の成就感やできている感、効力感などをサポートさせていただいています。

 もう一つのめばえ学園は、母子あるいは父子の支援です。めばえ学園でお子さんに関わっていただく中で、職員の方にいろいろ折りに触れてお話になる親御さんの姿でもありますが、家庭での母子・父子関係、やはり親子でいる時のおっかなびっくりな感じとか、あるいはすごく適切な関わりをしようと思ってもなかなかできないためらいとかが、すごくつぶさに出てきます。
 大抵の場合、最初に親御さんにお子さんを抱っこしてもらって、「これから動作法を始めます。よろしくお願いします」と言って、お母さま、お父さま、お子さんもおじぎをして始めるのですが、ご想像されるように、まず抱っこされることそのものが非常に触覚的な過敏性により、お子さんがじっとしていられないところがあります。でも、そういう時はしっかりとまなざしを向けて、親御さんの方を向いてくれた時に「しっかり見ているよ」と返してあげていただきます。必ずしも接触だけがコミュニケーションのきっかけではなくて、そういうアイコンタクトを一瞬でも持てるところが、すごく関係性が深まるきっかけでもあるので、そういうところも親御さんに声掛けをしていただいています。
 そこから大抵、(親が子の腕を取って)腕上げから始めるのですが、自分で手を上げてしまう子もいます。それを自分で上げるだけではなく、ゆっくり上げたり、少し速く上げたりとペースを保ちながら親御さんと一緒に上げていく。実は腕上げというのは、「触れてあげる中で一緒に上げていく」ということなので、そこには自分だけが動いているわけではなくて、「一緒に動いてくれている人がいる」というこの実感が、動作法を繰り返す中で体験されていくのです。親御さんも、おうちでもお子さんと一緒に過ごしたりしますが、やはりどうしても一緒に動く、あるいは一緒に遊んでいるという実感がなかなか持てない。特に多動がすごくある、あるいはこだわり行動が出ている時は、そういう実感がなかなか持てないものですが、動作法でちょこっと一緒に動いたという、このちょこっというだけでも、一緒に動いたというこの感じは、やはり親子が一緒にその瞬間を味わえたことにつながります。
 だいたい親御さんは「このぐらいしか動かなかった」とか、あるいは「動いたけどすぐやめた」と、どうしてもネガティブにご覧になりますが、私はその時にすかさず「いやいや、今ちょっとでも一緒に動いてすごかったね」「お子さんもそうだけど、それを一緒にできたお母さんもすごいね」と伝えます。やっぱりお子さんがすごく動き回ったり、あるいは自分のことばかりになっている時に、「ちょこっとでもお母さんと一緒に動いた」というこの実感は、お子さんにとっても親御さんにとっても、その瞬間が自信につながるかなと思っています。
 (めばえ学園は)学齢期以前なので、やはり学齢期までのところで、そういう瞬間、瞬間を親御さんとお子さんがつくるところがすごく大事なことかなと思っています。私は親御さんも支援者の一員であるということで、親御さんへの支援も、支援者支援ではないかなと思っています。
 そういう話をめばえ学園で職員の方々に、ビデオを見ながらあとでフィードバックをしていくと、お子さんだけではなくて親御さんの振る舞いが普段見られないものだったりして、職員の方々の親御さんに対するまなざしを共有するきっかけにもなっているのではないかなと思っています。そういうところも支援者支援につながっているかなと思っています。