嬉泉

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嬉泉の想

鼎談「支援者支援がめざすこと」-04-

赤塚福祉園での取り組み

石井

 いろいろなお話をしていただいて、本当に共感しかないのですが、今日は時間の関係もあるので少し絞ったお話をさせていただこうかなと思っています。
 「支援者支援」で言うと、いろいろな療育や支援の方法が世の中にあまたありますが、支援者の側にスポットを当てたもの、支援者に着目したものはあまり多くないのかなという感じを受けています。その中で受容的交流の考え方は、非常に支援者側の、利用者に対する見方であるとか、関わり方の態度、支援者自身の心の動きを重視するものだと考えていますが、その観点でもすごく通じるお話があったなと感じました。
 今日はちょうど、小池が赤塚福祉園の園長でもありますので、特に赤塚でのことを中心に話をしていきたいと思います。
 まず利用者さんが動作法の場に来て、そこで本当に変わっていったというお話。成人の支援は、巷ではなかなか「療育」とは言われないのですが、やっぱり何歳になっても人間は精神の発達がありますし、そこで発達障害と言われている自閉症の人たちの支援の中に、発達支援は当然含まれるべきだと思います。実際に受容的交流の考え方の中でも、目的の一つとして発達支援があると捉えています。長い年月を通して、利用者さんが非常に変わられるというお話がありましたが、どのような変容が見られることが多いと捉えていますか。

藤岡

 余裕と言いますか、セッションに来て体を動かしたり、あるいはやりとりをしたりする中で、すごく自分から動きを始めて、かつ職員の方の動きにしっかり合わせて一緒に動かせるようになる。つまり相手のことも受けとめながら、自分の動きもしっかり表現できるところ。最初の頃は、やはりどうしても自分の動きのみに意識が向いて「やったでしょ」というぐらいの感じなのが、職員と一緒に動かすところで、自分の気持ちを調整することが、すごくつぶさに伝わってくるようになってきますよね。
 それから、動作法のセッションが終わったあとに生活の場に行くと、本当ににこにこして、行く前より行ったあとですごく表情が穏やかになるということを職員の方からよくお聞きしています。おそらく自分の気持ちを調整できた実感、頑張って(無理をして)調整するよりは、こんなふうに調整すると気持ちが穏やかになるとか、そういう心持ちの部分を実感できているのではないかな。これは嬉泉の新聞にも書かせてもらいましたが、セッションの場から帰ったあとに(利用者、職員)みんながすごく表情がにこやかな穏やかな顔になってくるということを職員の方々からお聞きしました。

石井

 気持ちの調整とか、一緒に動くというか、むしろ利用者の方が職員の動きに合わせることが見られるとのことですが、つまりそれは職員との関係性や人間関係、あるいは利用者さん側の視点で言うと、ある種の自己統制力が向上しているというか、発達したのではないかなと感じましたが、そういった理解でよろしいですか。

藤岡

 私もそう思います。動作法のセッションで、誰と一緒にこういう動きができて、こういう気持ちの変化が起きてきたというところ、この「誰と」という体験の蓄積が、おそらく「職員の方」というところが、私はすごく大きな意味を持っていると思っています。動作法以外の生活の場でも、「この人と一緒だったらいろいろなことがチャレンジできるかも」「自分は今、気持ちが朝から落ち着かないんだけど、この人の顔を見ると、あるいはそばに行くと、この人と一緒に鎮められるのではないか」と予測がつくようになってくることがあるのではないかと思っています。
 それが、ある特定の職員の方とできると、他の職員の方ともできるようになる、あるいはご家庭でも親御さんと一緒にできるようになるという、理事長がおっしゃっていた「関係性の広がり」がどんどん起きているのではないかなと思います。

石井

 まさに受容的交流の目指すところの話だなと思いますが、赤塚福祉園の職員はどのように理解していると小池さんは捉えていますか。

小池

 今おっしゃっていたように、「この人と一緒にいると安心できる」という、これがまずスタートなので、そこから始まって、そういう人がだんだん増えていく。利用者の方にとって「この場所だったら安心だよ」というところに赤塚福祉園がなれれば、本当に理想だよね、という話は職員にしています。
 ただ、職員全員が本当にそこまで理解できているかどうかは、自信を持って言えないですね。通所型の事業所なので、朝に来る時間と帰る時間は決まっているし、その間でこの活動をしなくてはいけない、というある程度の流れがあって、その日々の流れの中で、そこまで深いところまで掘り下げていこうと思うのは、なかなか難しいことかなと思っています。
 実際に全部うまく行っているとは思えないところは確かにあるのはあるのですが、動作法を行っていただいた時に、利用者の方が変わっている時は職員が先に変わっているはずですよね。まず藤岡先生から「今日はこれを行うよ」と課題を与えられて、それを利用者の方と職員が一緒に取り組んで、「これができるようになりました」という過程で、利用者の方が職員を頼って安心できるのであれば、職員も「あっ、この人と一緒にできて良かったな」と実感を持つことができる。その場をつくっていただいているというのがすごく大事なことだと思います。
 普段の活動の中で、普段の利用者の方との関係性をそこまで持っていければまた違うのでしょうが、そこはなかなかまだ難しいのかなとは思います。が、目指している場所は本当にそこだと思いますので、そこに向かって一緒にできるのは本当にありがたいことだと思っています。藤岡先生の講評のコメントや、職員とのやりとりを見させてもらっていても、やはりそういう観点で関わってくださっていて、それに対して職員は「翌月のセッションまでにこういうことをきちんと行っていこう」と本当に一生懸命に取り組んでいるので、それは着実に広がっているなと思います。だから本当に、全員がそのようになれたらいいだろうなと思いますが、やはりとても難しい道だと思います。そこを自力で行うのはすごく大変なので、藤岡先生のように、内部の職員ではない、別の方が来てくれて、そのように話をしていただけると、職員の理解がものすごく進むのでありがたいことだし、良い機会だと思っています。
 赤塚福祉園にも二十数年もおいでいただいていて、職員の中には本当に動作法が定着していますし、ご家族の中にもそれが広がってきています。めばえ学園のように、その場にはいないですが、利用者の方が変わっていく姿をご家族は見ていますので、「動作法のセッションに、すごくにこにこして参加していきます」という方もいらっしゃいます。それは本当に、(現在の職員だけでなく)これまで対応してきた歴代の職員たちの積み重ねだなと思います。ただそれに気がついているかどうかは、まだ職員側の努力が足りないかなと思っています。