嬉泉

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嬉泉の想

鼎談「支援者支援がめざすこと」-06-

バーンアウト・リスクを防ぐ「炭鉱のカナリア」

藤岡

 そういうところで、仕組みとして先ほども少し紹介した共感疲労や共感満足などの気づきを通した支援者支援があります。私は「炭鉱のカナリア」という言い方をしていますが、支援者として状態が少しきつくなっているという時に、ちょうど昔に炭鉱夫の人たちが炭鉱の奥に入って、酸素が不足した時にカナリアが一緒に入っているとバタバタとして、それを見て「自分は今かなり危険な状態だ」と認識し、外に出て新鮮な空気を吸うという。支援者にとってのそういう「炭鉱のカナリア」的な役割を持つ、疲労感や少し焦っている感じ、あるいは傷つきなどを誰かに話をして「少し調子が悪いんだよね」と言う。でも、そこを話してリカバーすることで、その先にある、これはいよいよ支援者支援の中では「最後の砦」と言っているバーンアウト・リスクが高くなるのを防ぐことになるのです。
 「炭鉱のカナリア」はバタバタしているのに、そこをスルーしていくと、本人も気がつかない中でバーンアウトへと至ることがあります。実際にバーンアウトの自己チェックなどをしてもらうと、私の経験では、組織の職員の中の数%は既にリスクが高くなっている人がいらっしゃいます。自己チェックができるということは、当然離職はしていない中で、かなり厳しい状況だが頑張っている。でも、その方々にやっぱり優先的に自己チェックなどを通して気づいてあげて、「バーンアウトのリスクが高くなっているみたいだから、本当にどんなたわいもないことでもいいから、ちょっとここで話してみようよ」と言ってもらう場があると、そこからまた戻ってこられることがあります。
 バーンアウトの研究はすごく進んでいて、その症状は三つあると言われています。一つ目は「情緒的消耗感」、精神的な疲労が非常に高くなる。それから二つ目が「脱人格化」と言って自分らしく仕事ができなくなってしまう。それから三つ目が「個人的達成感の低下」です。私が見たところでは、組織の中で「情緒的消耗感」は数%とかなりリスクが高くなっている方がいらっしゃいます。「脱人格化」の方も数%。意外と「個人的達成感の低下」は10%を超えています。10%ちょっとくらいなのですが、でもそれは「最後の砦」なので気づけます。だから、やはりそこは組織的な支援としてすごく大事かなと思っています。
 これらの対象は子ども家庭福祉領域の児童養護施設や児童相談所の方々が多いですが、障害児者領域においてはまだまだで、もっと取り入れていただきたいと思っています。セルフケアも大事ですが、組織として支援者支援コーディネーター的な方を置く。私は常勤ではなくても、あるいは外部から呼ばなくても、兼務でも十分ではないかと思っています。先ほどからお話を伺っていますと、小池園長は既に支援者支援コーディネーターの役割を果たしていらっしゃるのではないかなと思いながら、ずっと聞かせてもらっていました。その辺りを、またお二人からいろいろお話を伺えるとうれしいです。

石井

 バーンアウトもそうですが、共感疲労などといった部分に気がついて、職員のメンテナンスを積極的にしていくことは、支援の質もそうですが、やっぱり職員の定着ということにすごく関わってくる話だなと思って伺っていました。
 特に嬉泉に就職してくる職員の方は、「自閉症や障害のある方や子どもが好きだ」ということが大事な方が多くて、そういう方が求めるものはお金などより、やりがいというか、本当に好きな仕事ができるか、そこで手応えが得られるか、先生がおっしゃったような自分らしく仕事ができるか、そういう有用感を持つことだと思います。
 ある部分、本当にフィットする人にとっては、すごくそれが満たされる職場だと自負していますが、やっぱりそこでどうしてもかけちがいがあったり、あるいはご自身が迷路に入り込んでいたり、あるいは気力がなえてしまっているとかがあると思います。
 実際に、特に自閉症の行動障害がある方に対応するのは、非常に情緒が疲弊する仕事だと思います。そこを支えるという意味で、嬉泉ではそれがスーパーバイザーであり、同僚としても支え合うことが大事だとは言っていますが、もう少しシステム的にそこをきちんと支える。それこそ支援者支援コーディネーターを配置することが必要だなと、お話を伺っていて思いました。
 それについては、どういった形でトレーニングをすればいいのでしょうか?また、人的な余裕で言うと兼務にせざるを得ないところはありますが、やはり園長といえども、通常業務の中での利害関係がどうしても生じてしまいますし、職員と上下関係がありますので、その意味で完全にサードプレイスになり得ない部分があるのかなとも思いますが。

藤岡

 先ほど児童相談所の例を出しましたが、兼務で行っていただいているのは児童養護施設が多いですが、コーディネーターが複数いることがすごく大事だと思っています。「この方とはすごく普段から仲がいいけど、こういう内容については業務にも触れることもあって少し言いづらい」などいろいろあると思います。複数いらっしゃると「このことはこの人に」という対応が可能になる。
 先ほどスーパーバイザーのお話もありましたが、非常にサポーティブな、支持的な役割をもっぱら中心にされるスーパーバイザーもいらっしゃる。またさらに、教育的な、教える感じでされるスーパーバイザー、いろいろ危機的な状況の中においてどう動くかという管理的な側面でのスーパーバイザーもいらっしゃると思います。
 そのように支援者支援においても、やはり選べると言いますか、「このことはこの人に」というのがあるといいので、兼務であっても二人とか三人で、専属では雇用における負担もあるので二人ぐらい。一人が常勤で、他の方に兼務で二人ぐらいとか、そのような仕組みもあっていいのかなと思っています。

 先ほどの定着支援という意味ですが、やはりずっと仕事を続けていくとライフサイクルの中で、例えば、親の介護があったり、お子さんの受験があったり、パートナーの病気があったりなど、いろいろなことが人生の中に起きてくる。しかし、そのたびごとにメンテナンスしながら、支援者として仕事を続けていくことは、実はすごく至難の業ではないかなと。長く勤めることができていること自体が奇跡でないかなと思うぐらい、本当に色々な方の支えによって乗り切っていらっしゃるのではないかなと思っております。
 そういう全体的なところを、支援者支援コーディネーターの方が、守秘を前提に受けとめてくださることが大きな役割だなと思っております。だから、そこはおそらく定着支援においても非常に大事なところです。